税理士などの士業と呼ばれる業種はサービス内容が目に見えないため、その仕事内容について他者との明確な差別化がしづらいです。
差別化がしにくいということは「お客さんに対するアピールがしにくい(訴求力が弱い)」→「高付加価値を実現しにくい」ということにも繋がり、事務所経営に深刻な影響を与えることになりますので何らかの対策を考えなければなりません。
当事務所では、本当のところは「知識豊富な税理士が直接申告書を作成することによる高品質な申告書の作成力」を売りにしたいところです。
が、税法自体が一般の人からすると複雑怪奇なものとなっている現状、
「どうですか、うちは他の税理士と比べて、正確で、可能な限り節税対策も十分に織り込んだ、いい申告書作っているでしょ?」
と訴えかけても
社長さんは「えっそうなの?」と困られるだけだと思います。
最近HPで低価格を売りにしている税理士先生もいらっしゃるようですが、正直なところ「その値段でちゃんとした申告書が作れるの?」、「低価格化にすることを差別化と勘違いしてるんじゃないの?」と思うことの方が多いです。
で、サービス内容を見てみるとその関与形態は、お客さんが自分で会計ソフトに入力する一方、税理士はほとんど会社に訪問せずにメールだけで対応し、年一回の決算をやるというパターンが多いようですし、決算書の作成だけという関与もしている様子でした。
また、実際「ここは安い!」と思って報酬体系を見てみると「仕訳数が月100仕訳以上の場合は+2000円/月」とか、「税務相談が必要な場合は+6000円/月」とか、「通信費、交通費等の実費は別途請求します。」とか、基本料金以外に追加で費用がかかるケースがほとんどです。したがって積み上げ計算してみると、結局はあまり相場と変わらなかったというケースも多いと思われます。
(そういう事務所に限って基本料金や最低料金を派手に宣伝して、オプション料金の説明は小さい字で書いてあったりするので要注意です。)
私も開業したてのころは、諸般の事情で毎月訪問せずに法人税申告書の作成をしていましたが、はっきりいって、毎月処理していなければ申告をちゃんと作るのは、相当の手間がかかります。
時間がない状況で申告作業をすると、どうしてもミスが起きやすくなるという心配もあったので、今では法人の年一回申告だけの関与は新規では受けつけていません。
また、私は毎月のメールチェックだけという関与にも否定的で、お客さんからの強い要望があり、しかもそのデメリットを十分に理解していただいている方としか契約していません。
低価格の契約に多い、訪問なしという関与形態に関しては、「毎月、メールでデータチェックしてるんだから、ちゃんと税務上のチェックもできてるよ。」という声もあるでしょうが、我々が毎月社長さんや経理担当者の方とあってお話をするということはお客さんが考えている以上に重要なことなんです。
というのは、経理に関係ないような雑談の中にも「それって節税に使えますよ」という事が含まれていたりもしますし、電話やメールでは相談しにくいとか面倒だと思うような細かいことでも、毎月の訪問時に気軽にお話してもらえれば、その場でお答えすることができて、社長さんの判断も迅速に行えるというメリットもあるからです。
しかしながらお客さんからの低価格への要望も確かにあることは事実です。
ただ、誤解を承知で言わしてもらえると専門家と呼ばれているサービス業に関しては
「安けりゃいいってもんじゃない」ってことなんです。
けっして負け惜しみじゃなく・・。
というのは「品質の確認が顧客側で判断しづらい(=粗悪品を判別しにくい)」という理由からです。
私が低価格な税理士を探している社長さんに聞いてみたいのは、次のようなことです。
「安いのはもちろん会社経営にとってはいいことですが、できあがった申告書が間違ってないかどうか社内に判断できる人がいますか?」
「税理士が失念していて提出すべき届出書等が提出されていなかったら、どうしますか?社内で管理していますか?」
「社長の質問内容に対して税理士から返ってきた答えが、税法と照らし合わせて正しいかどうか判断できますか?」
残念ながら税理士だからという理由だけで、「任せて安心」という訳にはいきません。
私は少々顧問料が高めでも、企業の参謀、相談役として社長さんからの信頼を受けるに足る税理士に依頼することが、会社の発展の手助けになると考えます。
優秀な税理士をうまく使おうと思えば、やはり社長さん自身が会計・税法を少し勉強していただいて、税理士を見る目を養っていただく必要があるということですね。
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